言の葉の書き上げ

書き上げました

日本SF大賞のエントリーについて

 第41回日本SF大賞のエントリーは2020年10月31日で締め切られました。エントリー文章はメールアドレスの記入だけで誰でも送ることができ、作品選出は相対評価の必要はなく「絶対評価」で良い、となっており、私は今回初めて、エントリー文章を4件書きました。名前は5京メートルです。どれも大賞を取ることはないかなとは思いつつ、賞の目安である「このあとからは、これがなかった以前の世界が想像できないような作品」や「SFの歴史に新たな側面を付け加えた作品」に当てはまるものを自分なりに推しています。以下はそのエントリー文章とコメントです。本文章は11/2時点で書いており、まだ全エントリーが公開され切ってはないので、エントリーの最終結果とは内容が食い違う可能性があります。

なおエントリー募集要項https://sfwj.jp/awards/Nihon-SF-Taisho-Award/41/guidelines.html の最後に、“コメントに関する諸権利は日本SF作家クラブに属します。”とありますが、本ブログが何か問題があるとのご連絡頂いた場合には、削除等相応に対処いたします。

 

ゲーム『Xenoblade Definitive Edition』

“巨大な二柱の神の骸の上に築かれた世界は、広大で豊かな探索フィールドを備え、個人・種族のレベルでさまざまな背景を負った人々の営みが乗せられ、圧倒的な存在感を持って立ち上がっている。未来を視ることのできる神剣モナドの力は、リアルタイムバトルにおいて“未来を変える”システムとして落とし込まれつつ、ストーリーにおいては人々を世界の根幹へと導いていく。創世と意志にまつわるSF的世界設定、その哲学性が、徹底した作品の作り込みによって壮大なゲーム体験そのものとして顕現している本作は、ゲームの形をとった新たな神話である。 2010年に発売された作品のリマスター版ではあるが、キャラモデル、グラフィック、音楽、UIに手を加え、新規エピソードを追加した「決定版」であり、プレイヤーに新たな体験をもたらしている。”

コメント

「新たな神話である」。かなり飛ばしましたが、プレイフィールとしてはこれくらい書かなきゃな、という気持ちです。全体的に遊んでない人には伝わりにくい気がします。自己満足になってたら駄目。最後のはリマスターだからと弾かれないための予防線。

第40回大賞でジュールさんという方がゼノブレイド2をエントリーしていました。本作を評価しないのはSF業界の怠慢だ、とのことでかなり飛ばすな、と思ったのですが、内心私も遠からず思うところはあり、エントリーされてないかな?と探してるときに見つけたので嬉しかったです。次こそは自分でエントリーしようかな、というのが今回の動機のひとつです。

 

小川一水 

『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』
“巨大ガス惑星での網漁という特異な題材が、ダイナミックに、詳細に、競技性を感じられるほどにいきいきと描かれる。 惑星移住後300年の歴史によって旧態依然とした制度が築かれた氏族社会を、例外的な女性二人組が掻き回していくストーリーはきわめて痛快。 二人の価値観や互いに向ける視線が次第に変化していく様子や、ガス惑星上宇宙船での暮らしや文化の機微など、細やかなシーンの描写も非常に面白い。さらには惑星そのものにも秘密があって、物語の全体がワンダーに満ちている。 アクション、百合、萌え、フェミニズム等ジャンルを巧みに振り回しつつ、それによって「見たことも無いものを見せる」というSFの魅力をまばゆいばかりに解き放っている。”

コメント

前回大賞の同著者「天冥の標」と比較されるにしても、これがエントリーされないのはあり得なくない??という気持ちです。百合SFに脳をやられているので公平な評価かはわかりませんがしかし本賞は絶対評価が、というか普通にSFとして素晴らしい作品です。誰か書かないのかとやきもきしても一向にエントリーされず、自分でやるしか……となりました。

11/2時点でもうひとかた岩崎貞明さんという方が、フェミニズム方向からの評価を推してエントリーされてますけど、お名前で検索するとメディア総合研究所事務局長、「表現の不自由展」実行委員の方が出てくるのですが、この方なのでしょうか。偶然同名の可能性もあります。


クラウディア・ヴァーホーヴェン(著) 宮内悠介(訳) 

“『最初のテロリスト カラコーゾフ ─ドストエフスキーに霊感を与えた男』
 1866年4月4日のロシア皇帝暗殺未遂事件について、夥しい量の資料を参照することでその知られざる象徴性が多角的に検証されている。事件がドストエフスキーへ与えた影響の大きさも示されて、テロリズムの成立条件としての近代の分析が行われており、SFのみならず文学ジャンル全体に巨大な影を落とす19世紀ロシアという舞台に、新たな光を当てている。翻訳書ではあるものの、訳者宮内悠介が出版企画を筑摩書房に持ち込んだことで本書ひいてはカラコーゾフという人物が日本に紹介されたことの意義は大きいと考える。”

コメント

「SFか?」「海外の本では?」というのはありますが、過去の例を見るとまあ受理はされるだろうと思いました。正直本書をまっとうに評価できるほどの含蓄は私には到底ないため、宮内悠介が面白いの出してました、という紹介がわりにでもなればという思い。もっと読まれるべき人に届いて欲しいような本です。実はとっくに届いていてその情報がこちらに届いてないだけかもしれません。

宮内悠介は「遠い他国でひょんと死ぬるや」「黄色い夜」の二作も対象期間内でどちらも興味深く楽しみましたが、SFとしては読まなかったかなというのでエントリーはしませんでした(それはカラコーゾフもでは……)。とは言いつつ、特に「遠い他国で~」の方は誰か1人くらいエントリーしてもいいのにと思います。

一方で

“宮内悠介「国士無双」で優勝する”

がエントリー。優勝おめでとうございます。

ネット配信される麻雀大会で優勝したり、ノンフィクションを翻訳したり、「遠い他国で~」では【芸術選奨文部科学大臣新人賞文学部門】を受賞したり、あと新型コロナが流行りだした頃は南極にいたり、宮内悠介いろいろやっててズルいな……という気持ち。何を書かれても読むような気がしますが、たまにはSF畑に顔を出して貰えるとより嬉しいかもしれません。スペース金融道の文庫化はまだなんでしょうか。

 

TV番組・動画『世界SF作家会議』
“世界の危機に際して、公共放送の場でSFの想像力が求められることとなった。新型コロナウイルスの流行で混乱している世界に対し、SF作家の語る言葉は興味深く、新たな視点をもたらしてくれる。パンデミック以外のテーマも見てみたいので、是非とも番組企画の継続を希望する。”

コメント

面白かったし、パンデミックテーマ、劉慈欣の顔出しと、今年の象徴的な企画だったのでエントリーされないのは寂しい。エントリー文章は燃え尽きぎみで、短く最低限の体裁だけ整えてます。

番組企画はぜひ断続的にでも続けて頂きたい。いつか異常な緊張感に包まれている地上波百合SF回が見たいような見たくないような、出演者全員辞退しそうな、そんなことを思います。これはやらないでほしいです。

 

 

全体の雑感としては、

エントリー少ないと思うので、もっと皆すればいいと思います。

 

以上