言の葉の書き上げ

書き上げました

あの空のむこうに巨大怪獣の影があっても三日で飽きる(暇すぎるので短歌10首詠んで全部自分で解説する)

音をだいたい57577に並べて完成っぽくします。それ以外のルールは知らない。
10首できたら終わり。

 
 
・わたくしの心のこもった血を飲んで 振り向かずゆく永遠の君

 

 

・「伝わった」送ってないのに来た返事 今日もここから出られないまま

 

 

・この赤はあなたも見ている赤ですか 赤と緑の見分けがつかない

 

 

・光散るフロントガラスを拭い去り前方を見ろと左右に揺れる

 


・この部屋の今のあるじは扇風機 人は寝伏せり 息吹よ巡れ

 

 

・14年光るし除細動できるし自我も融かせるが融通利かない

 

 

・雪の日の静かな土をかき分ける年つきを思え theyこそは蝉

 

 

・放課後にソースで濡れた君の袖 染み抜きもされず桜と香る

 

 

・短針に置き去りにされた闇の中 ひとりでぐるぐる いなくなれぼく

 

 

・竜巻が巻き上げていったもののうち ひとつに過ぎない八つ裂きの蝶

 

 

解説

 

・わたくしの心のこもった血を飲んで 振り向かずゆく永遠の君
押しに課金するオタクみたいなやつの吸血鬼主従風味。相手のことしか見てないようでいて「わたくし」とか「心のこもった」とか自意識がでかいような気がする。

 

・「伝わった」送ってないのに来た返事 今日もここから出られないまま
Twitterは共感にあふれているように見えるけどきちんと心に触れられることはほぼ無くて精神的な出口にはならない異常な空間。というか本当の気持ちなんて送れない。Twitterに限らず、どうすれば出られるのだろう。

 

・この赤はあなたも見ている赤ですか 赤と緑の見分けがつかない
上の句はクオリアの話、と見せかけて下の句で色弱がキレる、という意味のつもりだったんだけど、さすがに伝わりにくい気がする。クオリアの話をする暇があったら色弱の話をしてほしいです。

 

・光散るフロントガラスを拭い去り前方を見ろと左右に揺れる
夜に雨が降るなかで車を運転した今日の風景。前方とか左右とか意識が振られる。

 

・この部屋の今のあるじは扇風機 人は寝伏せり 息吹よ巡れ
人がやる気なくて動けないときも扇風機はずっと動いてて偉い。人よりよっぽど生き生きしている。とぼけた上の句から最後はかっこよくできた。お気に入り。

 

・14年光るし除細動できるし自我も融かせるが融通利かない
LED、AEDLSDASDを合体させる思い付き。「融かせる」と「融通」で字が被っているのが面白いのか寒いのかもはやよくわからない。

 

・雪の日の静かな土をかき分ける年つきを思え theyこそは蝉
地中生活に思いをはせる歌にしたかったんですが、初め「我こそは」にしたら地中を乗り越えて人前に出てきて鳴いてるやつの歌になってしまった。「かれこそは」にしてみると、メスだっているし、むしろ出てきても鳴くことがないメスも絶対含んだほうがいいなと思い、「やつこそは」とかも考えたけど意図がわかりやすいので性別を指示しない三人称単数のtheyを使用。うけ狙いっぽくなった気がするけど、ギリギリ凛とした雰囲気が残っててほしい。

 

・放課後にソースで濡れた君の袖 染み抜きもされず桜と香る
うけ狙いで作った。なんの思い出もないので時間かかった。春まで一緒に居れてよかったね。

 

・短針に置き去りにされた闇の中 ひとりでぐるぐる いなくなれぼく
不眠。時計の針の回転とひとりでぐるぐるしてるのを重ねている。最後は、早く意識を失って寝たい、というのと、不眠の原因もしくは寝れないことそのものがつらいので消えてしまいたい、というのがかかる。抽象的な上の句とひらがなだけの下の句の対比が決まってて、かなり怖くできたので、最高傑作だと思っています。

 

・竜巻が巻き上げていったもののうち ひとつに過ぎない八つ裂きの蝶
蝶の羽ばたきが竜巻を起こすバタフライエフェクトって、金言的な引用として「あなたは自分が一人に思えても、きっと何かとつながっている」みたいな意味で使われがちな気がするんですが、でも竜巻が起こった要因って別に蝶の羽ばたきだけではないんですよね。そう考えていくと、できごとの複雑さの中で「蝶」と「竜巻」のようにあらゆる「もの」と「もの」の関係が絶望的に軽くなっていき、その果てでは「創造」「破壊」のような絶対に思える関係ですら「無関係」へと近づいていくのではないか。
 ちなみに最初の歌(吸血鬼)はこれと対になっていて、初めの句では血を飲ませて生み出す主体の「わたくし」が、最後の句では破壊される客体の「蝶」になっている、のかもしれない。

 

 思ったよりもいいのができたので全部自分で解説しました。

私は......いったい何を......