前回
https://accoorrn.hatenablog.com/entry/2021/01/19/012932
の我妻俊樹「女と右目」に引き続き、また実話怪談に百合を見つけました。そればかり探しているわけではないが、見つけるとうれしい。
竹書房怪談文庫『エモ怖』を読みました。
松村進吉、丸山政也、鳴崎朝寝の三氏による、“幽かな想いの花びらが降り積もる舞台として編まれた”という実話怪談集(序文より)。
百合的な作品がいくつかあり、丸山政也「見かける」「オフィーリア」が目に留まりましたが、なんといっても鳴崎朝寝「くちなしと海」。完璧な百合。コミック百合姫に読み切りとして載っても違和感がない。謎のお姉さん、草花、海。辻褄の合わない経験と絵に描いたような情景。余韻。全て完璧。
また、同じく鳴崎朝寝による「彼女とピンク」も本書のなかでも特に印象的な一作で、読後感が「くちなしと海」とは対になって互いに引き立てている感がある。こちらは百合ではないけれど、……いや人によってはギリギリ百合になるような気もする。
鳴崎朝寝の単著の怪談集『宵口怪談 無明』も読んでみようと思います。
『エモ怖』は手に取るまでに若干の葛藤がありましたが、気になった人は読んでみるといいのではと思います。案外に幅広いタイプの作品が収録されていて、自分に合ったものがいつ来るかと待ち構えて読むのが楽しかった。