言の葉の書き上げ

書き上げました

「父たちの時間」(長谷敏司)

長谷敏司による短編集「My Humanity」収録の中編「父たちの時間」を再読した。

“二○六○年代の日本、原子力発電所放射線遮蔽用に開発されたナノマシンが自然界に漏出、驚異的な速度で独自の進化を遂げていきます。その絶望的な事態を食い止めようとする男の、研究者としての社会的立場と父親としての本質との葛藤を描いています。”

(編集部によるあとがきより)

生命の営みにおける男性の不要性が語られていたことを、なんとなく思い出して再読。非常時の対策に取り組む科学者の主人公は、父親としての役目にどうしようもなく失敗している。進化したナノマシンのオスが無謀にも海から地上へと向かっているのを眺めているラストは、生物的に不要とされた男性が何かを選択すること、その意味を見つめていて、とても感動的。